19世紀後半にイングランドで始まった「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、「手づくり」の感覚や「ものをつくる喜び」が生活の中で大切なのだという考えから始まっています。折りしも18世紀の産業革命でものを大量生産していた時代、先導者のウィリアム・モリスはこのような考えをデザイン運動として広めていきました。この展覧会では、アーツ・アンド・クラフツ運動がイギリスからアメリカに波及するまでの様子を紹介しています。 では実際どのようなものが作られていったのでしょうか。
【左】ジョン・ヘンリー・ダール《リスとナイチンゲール》(部分)
1895年頃 Private Collection photo
© Brain Trust Inc.
【右】アーネスト・ギムソン《小箱》
1910年頃 Private Collection Nashville, Tennessee photo
© James Prinz photography
皆さんの目にも触れたことのあるであろう美しいテキスタイルや壁紙、家具、インテリア、書籍が世に送り出されています。テキスタイルや壁紙に使われているパターンは、今では色々なものに使われています。リバティー・スタイルを代表するデザイナーの一人、アーチボルト・ノックスの銀器はかの有名なブラット・ピットもコレクターで、かなりの数の作品を所蔵しているとか。ティファニー製の笠が使われている卓上ランプや、細い背もたれのマッキントッシュの椅子などは皆さんもご存知の方が多いのではないでしょうか。建築家のフランク・ロイド・ライトは日本の帝国ホテルのデザインを手がけたことでも知られています。そして日本でも、民芸運動で知られる柳宗悦はモリスの運動に共感し影響を受けています。
【左】《ベッドルームの椅子(ヒルハウス)》チャールズ・レニー・マッキントッシュ
1902年頃 Crab Tree Farm, Illinois photo
© James Prinz photography
【中】《帝国ホテルの椅子》 フランク・ロイド・ライト
1921年頃 博物館明治村蔵
© 2008 Frank Lloyd Wright Foundation / ARS, New York / SPDA, Tokyo photo
© 博物館明治村
【右】《卓上ランプ》台:ジョージ・プレンティス・ケンドリック かさ:ティファニー
1902年頃 Crab Tree Farm, Illinois photo
© James Prinz photography
モリスの手仕事にこだわった作品は高価なものになってしまい、結局は大衆は手に入れにくいという皮肉な結果を生んでしまうのですが、この運動がアメリカに渡り、大衆にも流れ込んで行くように努力されました。それはシンプル=作りやすい=たくさん作りやすいというところにアクセントを置いた考え方で、これが後のモダニズムに繋がっていくことになるのです。そして女性陶芸家たちにも影響を及ぼし、社会学的にも女性の自立を促すことに繋がっていきました。
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- と き: 2008年9月13日(土)~11月3日(月・祝)
- 休館日: 毎週月曜日(9月15日、10月13日、11月3日は開館)
- 開館時間: 午前10時~午後5時30分※会期中の金曜日は午後8時まで
(いずれも入場は閉館の30分前まで) - ところ: 埼玉県立近代美術館 企画展示室(2階)
- 観覧料: 一般 1,000円(800円)、大高生 800円(640円)
※( )内は団体20名以上の料金
中学生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付き添い1名を含む)はいずれも無料です。 - 主 催: 埼玉県立近代美術館
- 協 力: JR東日本大宮支社・埼玉県家具工業組合・埼玉県室内装飾事業協同組合
- 企画協力: 株式会社 ブレーントラスト
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モリスへのオマージュでしょうか。
展覧会の最後の章で柳宗悦の息子の柳宗理の「バタフライ・スツール」がさりげなく置かれていて、デザイン運動の波紋を今日まで感じられるようでした。
◆本展の中で、「マッキントッシュに座ろう!」というコーナーがあり、
実際に展覧会の中で展示されている椅子のレプリカに座れます。
その他にも、椅子の美術館として知られている埼玉県立近代美術館ですので、
館内至る所にグッドデザインの椅子がさりげなく置かれているのですが、
よく見てみるとマッキントッシュもいくつか見つかりますよ!
◆図書室には関連資料もあり、グッドデザインの椅子にゆっくり座って楽しむことが出来ますよ。
なお、本展は駐日英国大使館とブリティッシュ・カウンシルが開催する
UK-Japan 2008の公認イベントです。
会期中はジョン・レノン・ミュージアム
と観覧料の相互割引を実施しています。
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