ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ…
「あのな、それ“パン止め”じゃなくて“バッグ・クロージャー”って言うんだよ!」
「あっそ!じゃあこれ知ってるか!?」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ…
ここは浦和にある居酒屋、力(りき)。今宵も熱く盛り上がっている。ある客はサッカー談義に花を咲かせ、ある客は店長と哲学を語り、ある客は有意義な議論を交わしている。
私はこの店が好きだ。元気すぎるほどに元気で騒がしく、店名が「力」なだけに、いるだけで力がみなぎってくる。
落ち込むようなことがあると、私はここへ来る。おいしい料理を食べ、おいしいお酒を飲み、その騒がしさに身を置くと、嫌なこともぜんぶ忘れられる。人はみな、人とのつながりの中で生かされているのだと、そう感じて心が満たされていくのだ。
…と、ここでまた客の会話が耳に入る。
「イチローって次男なんだぜ」
「ふーん。じゃあこれ知ってる?スフィンクスの見つめる先に何があるか」
「何?」
「ケンタッキー」
「へえへえへえへえ」
「あとふと思ったんだけど、“ステキ”ってなんで“素の敵”って書くんだろう」
「なぜだろう、ぜんぜんステキじゃない」
「変だな!!!!」
どうやら今宵もまた有意義な議論がなされているようだ。