私はマネキン。正確に言うと、マネキンの首から上の部分である。肌は汚れ、ゴーグルらしきものをつけられている。そして、額に書かれた「V4」という文字。この文字を書かれた瞬間、私は、なぜか自我を持ってしまった。神のいたずらだろうか。わからない。でも、それはどうでもいい。私はこの場所で行われているサバイバルゲームの一部始終を見届けることにした。
赤チーム。よくみるといちばん右に猫耳をつけた女性がいる。そんな装備で大丈夫か?私は不安になった。
と思いきや黄チームにもいた。猫耳ブームなのだろうか。私がデパートで活躍していた頃、猫耳族などはいなかったのだが…どういうわけか、私は自我を持つ前の記憶も有しているようだった。
これは…たぬき?誰かに狙いを澄ましているようだ。
「う…後ろから来るとは卑怯な…みんな…あとは…任せたぞ…」
「おい!無事に生き残れたら浦和のうなぎ食べに行こうな、約束だぜ!」
みんなサバイバルゲームに夢中で私が自我を持ってしまったことには気づいていないようだ。
おーーーい。ここにいるよーーーーーーー。
だめだ。気づかれない。腹が立ったので赤チームのひとりを念力で倒した。
…ああ、私は何をしているんだろう。デパートのマネキン時代に戻りたい。あの頃はみんなから見てもらえて本当に良かった。でもここでは違う。こうなったら、目から禁断のビームを出してこのゲームを終わらせてやろうか…誰にも気づいてもらえない寂しさから解放されるならば…
ビームを放ちかけた刹那、謎の帽子を被った男がこちらに微笑みかけてきた。え?え?この男、私に気づいているのか…?いや、絶対に気づいている。でなければこんな綺麗ピースサインはしないだろう。私はとても穏やかな気持ちになり、ビームを放つのをやめた。
こうしてゲームは幕を閉じた。ここはさいたま市岩槻、市街地をイメージしたフィールドでサバゲーを楽しめる「SISTER」。至近距離の銃撃戦など、一般的な屋外フィールドとは異なる緊張感が味わえるだけでなく、定期的にフィールドの配置も変わるため、いつ来ても新鮮でスリルあるゲームが楽しめるのが特徴だ。
…と、いきなり宣伝口調になってしまったが、要するにぜひあなたにも参戦してみてほしいということ。撃ち、撃たれ、ドキドキワクワクする体験は、一度味わうと忘れられないだろう。
蛇足ではあるが、もちろんこの物語はフィクションである。それではまたいつの日か、どこかで。