ヨーロッパ野菜。耳馴染みのないそんな珍しい野菜を、日々育てる11人の若手農家がさいたま市にはいます。始まりは、「さいたまでヨーロッパの野菜がつくれないだろうか」という、さいたまのイタリアン・フレンチのシェフたちによる要望からでした。その言葉をきっかけに、2013年春、「さいたまヨーロッパ野菜研究会」がスタート。今回は、研究会メンバーのひとりである神田さんにお話を伺いました。
――なぜさいたまでヨーロッパ野菜の栽培を始めることになったんですか?
まず、さいたまにはイタリアン・フレンチだけでも、市内に200軒以上のレストランがあるんですね。それである時、レストランのオーナーが「本場の野菜で料理をつくりたい」と行政に相談し、若手農家に声がかかったんです。「さいたまヨーロッパ野菜研究会」はこうして誕生しました。
――ふつうの野菜とはどんな違いがあるんですか?
個性が強い、というところですね。調理した時に素材の味がしっかり出てくるので、チーズにしてもワインにしても、とても相性がいいんです。日本の野菜は甘味が強いですが、もっとクセがあります。珍しい野菜なので、自分たちも最初はどうやって食べればいいのかわかりませんでした(笑)でも、ヨーロッパ野菜を使ってイタリアン・フレンチのシェフに調理してもらって食べると、野菜の持つクセが魅力に変わることに気づきました。ビールじゃなくて、ワインに合う野菜。それがヨーロッパ野菜です。
フェアリー・テイル
クララ
ロマネスコ
――見た目も個性的ですよね。神田さんが研究会に入ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
農業は、50代でも若手と言われる世界です。僕もまだまだ若手ですから、何か新しいことに挑戦したいと思いました。はじめは収穫見込みもわかりませんし、リスクも承知でした。お金に還元できないと給料が出なくなっちゃいますし。それでもやってみたい、と思ったんです。他のメンバーも徐々に手をあげていって、今11人います。平均年齢はだいたい36歳くらいだと思いますね。
――新たなチャレンジだったんですね。
そうですね。それに、ヨーロッパと違って日本は高温多湿の気候ですから、野菜が蒸れて病気になってしまうんですよ。そうならないように間隔を離して育てたり、水はけをよくするために高くしてみたり、大変なことも多いんです。でも、まだまだ伸び代がある野菜とも言えます。ほしいという声がとても多いんですね。全国的に見ても少ない野菜で、僕らのように組織化してやってるところも珍しいですから、頑張っていきたいです。
――これまでの仕事で嬉しかったことを教えてください。
やはり高評価をいただけたことですね。レストランのシェフや、食べてくれたお客さんから「美味しい」って言ってもらえることが何より嬉しいです。いろいろなメディアにも取り上げてもらって、「見たよ!」って声かけてもらったりして。そういう瞬間も嬉しいですね。
――現在どのくらいのレストランでヨーロッパ野菜は食べられるんですか?
活動5年目の2017年現在、県内で約1000軒、都内・全国で約200軒のレストランでお使いいただいています。特にさいたまでは、イタリアン・フレンチだけでなく、中華・和食・居酒屋などのさまざまなジャンルのレストランで食べることができます。
――では最後に、今後の目標を教えてください。
より多くの方々にヨーロッパ野菜の美味しさを知っていただき、親しんでいただけるようになることです。馴染みのない野菜なので、手に入れてもどうやって調理していいかわからない方がほとんどだと思うんですよ。でも、だからこそまずはレストランに足を運んでいただき、その鮮度の素晴らしさ、個性の魅力を感じてほしいですね。そして5年、10年先には、一般家庭の食卓にも並ぶ、そんな野菜にしていけたらと思います。ぜひみなさんも、一度味わってみてください!