鉄道博物館では、鉄道開業150年を記念し、「鉄道の作った日本の旅150年」と題した企画展を、2022年7月23日(土)から開催しています。”日本人は鉄道でどんな旅ができたのか”を貴重な資料をもとに時代ごとに知ることができる企画展です!
まずは明治時代の旅です。鉄道開業により人々の行動範囲は劇的に変わりました。江戸時代までにはお正月三ヶ日にお参りに行くいわゆる「初詣」の習慣は無かったそうです。それが鉄道により交通の便が良くなって毎年同じ寺社への参詣が可能となり、「初詣」と呼ばれそれが一般的になったようです。今では当たり前の正月行事が鉄道と深く結びついていたんですね。
続いて大正時代から昭和初期は、鉄道利用が一般的になり旅をしやすい時代でした。人々の移動範囲が広がったため、”誘客”を目的とした沿線案内図やポスター、駅のスタンプなどが作成されました。国鉄ではガイドブックの「日本案内記」を発行し、各駅では日付が入ったスタンプが人気になったそうです。
さらに昭和戦前には国を挙げてのインバウンド誘致が行われた時期がありました。鉄道省の外局として設立された国際観光局はインバウンド向けのポスターを作成しました。右のポスターは「Beautiful Japan」(吉田初三郎画)です。日本のイメージとして「桜・富士山・芸者さん」が描かれていますね。
戦時中になると鉄道と旅の状況は大きく変わってしまいます。「鉄道は兵器」という位置付けになり、輸送のための貨物列車が増え旅客列車は削減され、一般国民の旅は制約が課されました。出征や疎開、100㎞以上の旅には警察の申請が必要など、旅は自分の意思によるものではありませんでした。また、戦時中は紙不足のため、駅で発行の領収証は古新聞を使用したり、通常の乗車券を半分にしてそのまま使用したりもしたそうです。
それでも戦時中、鉄道は1日も止まることはありませんでした。終戦の日も、遅延しながらも運行していたというので驚きです。その運行記録が残る貴重な資料が今回展示されています。
この他にも、明治時代から始まっていた駅弁の紹介や、戦前に洋食が出されている食堂車の映像、昭和30年代の特急列車1等車(現在のグリーン車)の客室が再現された展示など、まだまだ見所はたくさんあります。また、3週間ごとにテーマに沿って展示内容が変わる鉄道博物館の秘蔵資料の特別公開スペースもあるので、何度でも楽しめます。
この企画展「鉄道の作った日本の旅150年」は2期に分かれています。前期は今回ご紹介した戦後までの内容となっていて10月24日(月)までです。子供には少し難しいかなと思える内容でも、親御さんたちが説明しながらいっしょに見ていくと、初めて知ることばかりで楽しみながら鉄道の歴史を学ぶことができるでしょう。夏休み期間にぜひご家族で”てっぱく”へお出かけください!
【鉄道博物館 鉄道開業150年記念企画展「鉄道の作った日本の旅150年」】
■会 期:2022年7月23日(土)〜2023年1月30日(月)
※前期:7月23日(土)〜10月24日(月)(鉄道開業前〜1940年代までの旅)
※後期:10 月29日(土)〜2023年1月30日(月)(1950年代〜現代までの旅)
■会 場:鉄道博物館 本館2F スペシャルギャラリー
■入場料:無料 ※鉄道博物館の入館料のみでご覧いただけます。
■その他:入館料・アクセス・開館時間・休館日など、詳細は<鉄道博物館公式サイト>でご確認ください。ご入館の際は指定のコンビニエンスストアで販売する時間指定の「入館券」(枚数限定)の事前購入が必要です。